フリーランス美容師とはどんな働き方なの?
フリーランス美容師と自営業の美容師の違いは?
フリーランス美容師の仕事の探し方には何がある?
美容師として働いているけど給料が上がらない、仕事がキツいなどの理由でフリーランス転身を検討している人は多いですよね。
また、独立したいけれど資金不足で店舗を構える余裕がないという人もいるでしょう。
この記事では、フリーランス美容師とは何かをくわしく解説しています。
フリーランス美容師の収入事情やメリットデメリット、フリーランス美容師で稼ぐ方法などを参考に、今後のキャリアを考えてみましょう。
※2024年3月時点の情報です。
フリーランス美容師とは
フリーランス美容師とは、企業や個人経営の美容室に所属せず、雇用契約を結ばず働く美容師のことをいいます。
自営業(開業)の美容師と違う点は、自前の店舗を持つか持たないかです。
どちらも個人事業主という点では同じですが、一般的にフリーランス美容師は店舗をかまえず、企業と業務委託契約をしたり美容室の一部スペースを借りたりして仕事をします。
フリーランス美容師の3つの働き方とは
フリーランス美容師のおもな働き方を、3つに分けて説明します。
業務委託契約のフリーランス美容師とは
フリーランス美容師の働き方のひとつに、業務委託があります。
企業やサロンオーナーと業務委託契約を交わし、サロンで働いている美容師と同様に出勤をして働きますが、雇用はされず「事業主同士の直接契約」という形になります。
労働時間や仕事内容は契約によって異なるため、業務委託契約を交わす際には契約内容を細部まで確認する必要があります。
業務委託で働く場合、契約先美容室の設備を自由に使えるため、独立資金のないフリーランス美容師にとって大きなメリットとなります。
面貸しを利用するフリーランス美容師とは
サロンの「面貸し」も、フリーランス美容師の働き方としてあげられます。
面貸しとは、美容室の一部スペースを借りて自分の顧客のみを相手に働くスタイルです。
売り上げはすべて自分の収入となり、その中から場所代や水道光熱費などの使用料を契約している美容室に支払います。
業務に使用する消耗品(シャンプー・トリートメントやパーマ液など)は、美容室にあるものではなく、個人で準備する必要があります。
シェアサロンで働くフリーランス美容師とは
シェアサロンを利用して働くフリーランス美容師も増えています。
シェアサロンとは、レンタル用の美容室やサロンを複数のフリーランス美容師で共有する働き方です。
美容室の面貸しとは異なり、店舗自体を自由に使えるところが特徴といえるでしょう。
売り上げはすべて自分の収入となり、その中からレンタル料やその他設備利用料を支払います。
基本的に利用者ひとりひとりが機材や道具をそろえる必要がありますが、近年では、美容室としてすぐに使える設備がととのっているシェアサロンもあります。
フリーランス美容師の収入とは
フリーランス美容師の収入事情を、美容師全体の収入と比較して解説します。
美容師の平均年収は300万~350万円
組織に所属して働き正社員美容師の平均年収は、300万~350万円です。
1カ月の給与にすると25万~30万円で、税金・保険料を差し引くと20万円前後となります。
さらに正社員は、基本給にインセンティブが加算されるケースがほとんどです。
仮にインセンティブを売り上げの20%とし、1カ月で100万円の売り上げがあった場合は、基本給+20万円から税金・保険料を差し引いた分が手取りとなります。
フリーランスで働く美容師の収入目安
フリーランス美容師の平均年収は総務省などの調査データにはありませんが、フリーランス協会のデータによると、もっとも多い層で年収200万~400万円となっています。
数値の幅が広い理由は、フリーランスの場合は売り上げが収入にダイレクトに影響するためです。
仮に1カ月の売り上げを100万円とした場合、税金・保険料や経費を差し引いて手元に残る収入は、業務形態にもよりますが40万円前後と考えられます。
月間売り上げ100万円以下ではフリーランス転身は難しい
フリーランス美容師に転身する際は、月間売り上げ100万円をひとつの目安にするのがおすすめです。
理由は以下のとおりです。
※平均的なインセンティブ/分配料/経費/各種保険料・税金などを計算
売り上げ100万円の正社員美容師とフリーランス美容師の月収
〇正社員…約35万円
〇業務委託…約37万円
〇面貸し・シェアサロン…約43万円
売り上げ80万円の正社員美容師とフリーランス美容師の月収
〇正社員…約32万円
〇業務委託…約30万円
〇面貸し・シェアサロン…約32万円
このように、月間売り上げが20万円違うだけでも、フリーランスの収入が大きく変化することがわかります。
さらにフリーランス美容師は、さらに集客や細々とした事務作業も個人でおこなわなければなりません。
正社員美容師よりも確実に収入が増える見込みがなければ、フリーランスになる「旨味」は少ないでしょう。
そのひとつの目安を、月間売り上げ100万円とおぼえてください。
フリーランス美容師のメリットとデメリットとは
フリーランス美容師のメリットとデメリットを、それぞれ3つ紹介します。
フリーランス美容師のメリット
フリーランス美容師のおもなメリットは、以下の3つです。
〇 自由度が高くやりがいがある
〇 売り上げが高いほど収入が増える
〇 ライフスタイルに合わせた働き方が可能
フリーランス美容師は、勤務時間や労働日数をはじめ、仕事のやりかたをすべて個人で決めることができます。
ひとりの顧客としっかり向き合うことができ、好きな商材を使うことも可能です。
また、売り上げが収入に直結するため、働けば働くほど収入が増えていくでしょう。
フリーランス美容師のデメリット
フリーランス美容師のおもなデメリットは、以下の3つです。
× 収入が不安定である
× 業務量が増える
× 社会的信用が低くなる
フリーランス美容師の収入は、売り上げ額がすべてです。
売り上げが減った月は収入も減るため、つねに安定した仕事を確保しなければなりません。
さらに、アシスタントを持たないフリーランス美容師は雑用や後片付けをすべてひとりでこなす必要がある他、これまで雇用主に任せていた事務作業も個人でおこなわなければなりません。
組織に所属していないため、クレジットカードやローンの審査に通りづらくなることも考えられます。
フリーランス美容師に向いてる人・向いてない人とは
フリーランス美容師に向いている人と向いていない人の特徴を紹介します。
フリーランス美容師に向いてる人の特徴
フリーランス美容師に向いている人の特徴は、以下の5つです。
1.コンスタントな売り上げがある
2.自分についてきてくれる顧客がいる
3.自己管理や細かな事務作業が苦にならない
4.向上心が強い
5.営業力、集客力がある
フリーランス転身の絶対条件として、コンスタントな売り上げと今後の見込み客の存在があげられます。
また、自己管理能力や強い向上心、発信力などに自信がある人も、フリーランス美容師に向いているといえるでしょう。
フリーランス美容師に向いてない人の特徴
フリーランス美容師に向いていない人の特徴は、以下の3つです。
1.実績がなく指名客の数が少ない
2.面倒なことを人任せにする傾向がある
3.「なんとなく」フリーランスになろうと考えている
美容師として実績がなく、個人の売り上げが低い人はフリーランス美容師に向いていません。
シフト管理や集客など、施術以外のこまごまとした業務が苦手な人も、フリーランス美容師として成功するのは難しいでしょう。
また、今後の展望がはっきりとせず、あいまいな気持ちでフリーランス転身を考えていると、失敗するリスクが高くなります。
フリーランスで働きたい美容師の職場の探し方
フリーランス美容師になるための職場の探し方を、ふたつに分けて紹介します。
業務委託契約の美容師求人がある求人サイト
もっとも簡単で確実な方法は、業務委託契約の求人がある美容系の求人サイトを検索することです。
得られる収入の目安やおもな業務内容などの詳細がすぐにわかるため、自分が希望する条件の美容室を選ぶことができるでしょう。
近年はフリーランス美容師の数が増えているため、福利厚生がついている業務委託契約もあります。
美容系専門のマッチングサービス
面貸しやシェアサロンをおこなっている美容室と、フリーランス美容師をつなぐマッチングサービスもおすすめです。
勤務時間や出勤日などをすべて個人で決めて働けるため、業務委託契約に比べて自由度が高いといえるでしょう。
近年では美容室側とフリーランス側の仲介だけではなく、契約などのサポートをしてくれるサービスもあります。
現役美容師がフリーランスに転身して今より稼ぐ5つの方法とは
フリーランス美容師として今より稼ぐための、5つのコツを紹介します。
確実に来店が見込める常連客を確保する
フリーランスに転身する前に、独立後も確実に来店が見込める顧客を確保しましょう。
通常、美容室の利用客は以下のふたつのパターンに分かれます。
1.美容室が気に入って通っている
2.担当の美容師を信頼して通っている
上記のうち【2】に該当する利用客は、独立後についてきてくれる可能性が高いです。
雇用主の許可があれば、自分を指名してくれる利用客全員に、フリーランスとして独立することを伝えておきましょう。
集客手段を確立する
フリーランスの美容師が今より稼ぐためには、集客が重要になります。
フリーランス美容師の集客手段には、おもに以下の4つです。
1.動画配信を含めたSNSで発信する
2.知人に紹介してもらう
3.クーポン付きのポータルサイトに登録する
4.チラシやポスターで宣伝する
これらの集客は、フリーランスとして業務をおこなうエリアの特徴や利用客の年齢層によって、向いているものが異なります。
ティーンにはSNS、ミドル世代にはチラシやポスターなど、自分の顧客に合う宣伝方法を選びましょう。
需要のあるメニューを展開する
フリーランス美容師として収入を増やすには、需要のあるメニューを展開してライバル社との格差をはかることが大切です。
この美容師に施術をして欲しいと思ってもらえるメニューやサービスなどを工夫すると、リピーターが増えていきます。
また、他店にはないオプションや、リピート来店でお得になる割引キャンペーンなどもおすすめです。
人脈を広げる努力を怠らない
フリーランス美容師で稼ぐためには、業界内外の人脈を広げておくのが大事です。
顧客が増えないときに紹介をしてもらったり、アクシデントが起きたときに頼ったりできる存在があると、安心して業務に集中することができます。
一見客や業者はもちろんのこと、ちょっとした関わりもおろそかにせず、つながりを断ち切らないようにしましょう。
経費削減と節税を意識する
フリーランス美容師が今より稼ぐ方法のひとつに、経費削減と節税があります。
フリーランスは業務上の出費を経費計上できるため、売り上げが増えなくても経費を削減することで、手元に残る額が増えるのです。
また、確定申告の際に青色申告をしたりe-Taxを利用したりすることで、基礎控除額が上がることも忘れずに覚えておきましょう。
フリーランス美容師になる前の5つの注意点とは
フリーランス美容師になる前の注意点を、5つに分けて解説します。
分配率や手数料など契約内容をチェックする
業務委託や面貸しなどで業務をおこなう際は、契約内容の詳細をしっかりチェックすることが大切です。
重要な項目は、以下のとおりです。
業務委託契約
・委託される業務の範囲
・分配率
・契約期間(契約解除の告知方法を含む)
面貸し・シェアサロン
・契約料、手数料
・利用可能な設備や機材
・トラブル時の賠償について
契約内容をあいまいにしておくと、いざというときに仕事を続けられなくなるおそれがあります。
金銭面だけではなく、細部に至るまで書面で必ず確認してください。
集客しやすい立地にあるサロンと契約をする
フリーランス美容師として契約するサロンは、アクセス方法を含めた立地にこだわりましょう。
ターゲットとしている年齢層や性別で、通いやすさは異なります。
また、これまで勤めていた美容室から離れた場所で独立すると、顧客がついてこられなくなる可能性があるので注意が必要です。
開業届+青色申告承認申請書を税務署に提出する
フリーランス美容師として働く場合、オフィスや店舗をかまえなくても、必ず個人で納税しなければなりません。
一定の収入があるフリーランスは、基礎控除額が高い青色申告を利用して確定申告をするのがおすすめです。
青色申告承認申請書は、開業届を出さなければ提出できないので、独立の際には開業届と青色申告承認申請書をまとめて提出しておきましょう。
売り上げの管理ができる会計ソフトを導入する
毎月の売り上げを管理できる会計ソフトを導入しておくと、経理がラクになります。
事務作業の手間がなくなることで、浮いた時間を集客や勉強などに使うこともできるでしょう。
とくに青色申告の場合は経理が複雑になるため、フリーランスにとって、使いやすい会計ソフトは必須アイテムといえます。
生活資金を多めに確保しておく
フリーランス美容師に転身する前には、数カ月分の生活資金をためておくことが大切です。
なぜなら、見込み客はあくまでも「見込み」であり、集客がすぐに成功する保証はないからです。
思うように収入が増えないリスクを考慮し、無収入でも生活できるだけの貯蓄を必ずしておきましょう。
また、病気やケガで一時的に働けなくなる可能性もゼロではないため、独立後も生活資金を確保しておくことをおすすめします。
まとめ
フリーランス美容師とは、雇用にとらわれない新しい働き方です。
一定以上の実績と売り上げをもつ美容師なら収入が増える可能性が高く、業務スタイルをすべて自分で決められるという魅力があります。
一方、収入が不安定だったり、雇用によるサポートが受けられなかったりといったデメリットも否定できません。
独立したいけれど不安があるという人は、雇用と独立のメリットを兼ね備えた業務委託契約を探してみましょう。