美容師が独立するのに必要な資金や準備は?
独立した美容師の年収はどのくらい?
独立を考えている美容師にとって、もっとも気になるのが独立資金や独立後の収入ではないでしょうか。
この記事では、美容師の独立に必要な資金や準備のステップをくわしく解説しています。
今が独立に適したタイミングかどうか、独立するまでにどんなハードルがあるかがわかるので、ぜひ最後まで読み進めてください。
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美容師が独立するベストなタイミングときっかけ
美容師が独立するもっとも適切なタイミングときっかけは、以下の5つです。
一人前の美容師として十分な経験を積んだとき
美容師が独立するタイミングは、年齢ではなく実績で判断します。
アシスタントを卒業し、一人前の美容師として十分と思える実績があれば、独立を検討しても良いでしょう。
さまざまな年齢層や性別の利用客を担当し、さまざまな施術スキルを身につけるのに必要な勤務年数は、目安として約10年といわれています。
サロン運営や経営スキルを得た後
サロン運営全般や経営のノウハウといった知識を取得しているかどうかも、独立の判断のひとつとなります。
なぜなら、美容師が独立して成功をおさめるためには、施術スキルではなく経営スキルが必要だからです。
シフト管理などのマネージメント業務や、サロン運営にかかわるポジションでの勤務は、独立のための重要なステップとなります。
貯蓄が目標の額に達したとき
独立のための貯蓄が目標額に達したときも、開業の大きなきっかけとなるでしょう。
美容師が独立する場合、資金の多くは融資という形になりますが、個人の貯蓄も必要です。
どんな職種でも、退職や独立のタイミングはつかみづらいものです。
そんなとき、貯蓄額は大きな後押しになるに違いありません。
雇用条件や業務内容に不満や物足りなさを感じたとき
インセンティブを含めた給与をはじめ、雇用条件に不満を感じ始めると、独立への意欲がわきます。
売り上げが増えているのに給与に変化がない、またはポジションが上がらないなど、所属している美容室で今以上の好条件が望めないときは、独立を視野に入れて今後のキャリアを考えてみましょう。
また、十分な経験を積み、現在の職場では今以上の成長が見込めないと感じているときも、独立のタイミングといえます。
ライフスタイルに大きな変化があったとき
独立するきっかけとして、ライフスタイルの大きな変化をあげる美容師も少なくありません。
結婚や出産、配偶者の転勤にともなう引っ越し、親の介護など、雇用で美容室を続けていくのが難しくなったとき、独立を考える人が多いようです。
独立すると自分の裁量で労働時間や日数を決められるため、キャリアを中断せずに美容師として成長していくことが可能です。
美容師が独立するために必要な資金
美容師が独立するために必要な資金について、3つのパターンに分けて解説します。
開業資金の平均は1,000万~1,200万円
一般的に、美容室の開業資金は1,000万~1,200万円といわれています。
開業までのおもな出費の内訳は、以下のとおりです。
・テナント契約料
・内装や設備工事費
・機材購入費
・備品や消耗品の購入費
・保険料
・宣伝や集客にかかる費用
・数カ月分の運転資金
店の規模や立地、内装設備などにもよりますが、最低でも1,000万円を目安にしておくのがおすすめです。
また、美容室を退職して開業準備に当てる場合、上記の他に生活費も必要となります。
小規模の「ひとり美容室」なら1,000万円以下で開業が可能
美容師と利用客がマンツーマンになるスタイルの「ひとり美容室」であれば、800万~1,000万円で開業することが可能です。
施術スペース、シャンプー台、その他機材などもひとり分で済むので、工事費や機材購入費を抑えることができます。
ひとり美容室は店の広さが10坪(約33平方メートル、20畳)あれば十分なので、物件取得費も安く済ませることができるでしょう。
初期投資を抑えるなら居抜き物件がおすすめ
できるだけ初期投資を抑えて独立したい美容師には、居抜きの物件もおすすめです。
居抜きとは、開業に必要な設備が整った状態の空き店舗のことをいいます。
自身が思い描いている内装やコンセプトが自由にならないというデメリットはありますが、工事費や機材購入費の一部を節約することができます。
美容師が独立するために必要な準備
美容師の独立に必要な準備を、開業までの9つのステップに分けて紹介します。
1.サロンのコンセプトやターゲット層を決める
独立を決めたら、まずはサロンのコンセプトやターゲットになる年齢層、性別などを考えていきましょう。
普段から、人気の美容室のSNSをチェックしたり、気になる美容室に行ってみたりして、つねにアンテナを貼っておくことが大切です。
ターゲットを限定すると、来客が減るのではないかという心配もあるでしょう。
しかし、誰でもウェルカムなスタイルにすると利用客側が、自分に合う美容室かどうかがわからず、客足が遠のくリスクがあります。
2.事業計画の作成
サロンコンセプトが決まったら、細部まで整った事業計画を作成しましょう。
希望する店舗の規模や契約に必要な費用、見込み売り上げ額、収益なども具体的に数字にしておくと、その後の動きがスムーズになります。
また、銀行から融資を受ける場合にも、事業計画書は欠かせません。
3.物件探し
店舗となる物件を探すには、絶対条件と譲歩可能な条件を決め、可能な限り希望に近付けることが大切です。
検討するべき項目は、おもに以下のとおりです。
・アクセス方法を含めた立地
・ターゲット層に合う環境かどうか
・店舗の規模
・家賃と初期費用
仮にティーンから20代をターゲットにする場合、交通機関が整っている場所での開業が必須となります。
ミドル世代や主婦層をターゲットとするなら、住宅街やショッピングセンター内のテナントも良いでしょう。
規模が大きいほど家賃や初期費用が高額になるため、資金に見合う店舗を探すことも大切です。
4.資金の調達
資金の調達方法には、おもに以下の3つがあります。
1.日本政策金融公庫や銀行から融資を受ける
2.自治体の補助金や助成金を利用する
3.身内に援助を頼む
もっともオーソドックスな手段は、【1】の融資です。
融資を受ける際には、美容師としての十分なキャリアや担保となる資金を準備することと、綿密な事業計画書が必須です。
5.不動産契約
不動産会社とテナントの契約を交わす際には、おもに以下の出費があります。
・敷金
・礼金
・初月~数カ月分の前家賃
・仲介手数料
・各種保険料
上記に加え、連帯保証人がいない場合は保証会社との契約も必要です。
また、店舗の環境によっては共益費や管理費、駐車場の契約費も別途かかります。
6.各種届け出
美容師が独立開業するときには、税務署・保健所・消防署への届け出が必要です。
届け出の内容は以下のとおりです。
税務署…開業届と青色申告承認申請書
保健所…美容室の開設届、設備の概要書など(後日、立ち入り検査)
消防署…消防検査申請書(後日、立ち入り検査)
開業届と青色申告承認申請書は、開業後1カ月以内の提出で問題ありません。
保健所と消防署は立ち入り検査必須となっているため、開業前に必ず届を出しましょう。
7.内装・設備関連の工事
内装や設備の工事で大切なのは、美容サロン工事の実績がある業者を選ぶことと、複数業者に見積もりを出してもらうことです。
一般的に、内装工事は坪単価40万円といわれているので、相場と比較をして極端に安い、または高い業者は避けましょう。
これまで勤めていた美容室経由で、信頼できる業者を紹介してもらうのもひとつの手段です。
8.必要機材や商材購入
美容室開業に必要な機材は、美容器具だけではなく各種家電や音響装置、会計に使うレジ、パソコンなども含まれます。
また、施術に使う薬剤やシャンプーなどの消耗品、タオルなどの備品もそろえておかなければなりません。
人目につかない洗濯機や冷蔵庫などの家電は安く済ませたり、自宅から持ち出せるものを利用したりするなど、できるだけ節約しましょう。
9.営業活動や集客
オープンに向けての営業活動や集客は、すべての準備と並行しておこないましょう、
これまで担当した顧客への挨拶はもちろんのこと、SNSアカウントを作成して準備の様子を投稿したり、店舗周辺でポスティングをしたり、開業準備中にできることはたくさんあります。
また、資金に余裕があればクーポン付きのポータルサイトに登録してみるのもひとつの手段です。
独立した後の美容師の年収目安と収入事情
独立後の美容師の年収や、収入の特徴について解説します。
自営業を含むフリーランス美容師の年収は200万~400万円
開業している美容師の年収に関する、公的なデータはありません。
しかし、フリーランス協会のデータによると、フリーランス美容師の年収でもっとも多い層は200万~400万円となっています。
独立した美容師の年収は、売り上げに大きく左右されるため、雇われ美容師時代より年収が減る人もいれば増える人もいるというのが実情です。
サロンオーナー美容師の収入は売り上げの約20%
サロン経営をしている美容師の収入は、売り上げの約20%といわれています。
経費の内訳は、以下のとおりです。
・テナント家賃
・水道光熱費
・備品、消耗品購入費
・販促費
・その他雑費
・人件費
経費とは別に各種保険料と税金、融資を受けた場合は毎月の返済なども加算されます。
年収400万円以上稼ぐには、毎月160万~170万円の売り上げが必要です。
スタッフを雇用するかしないかで年収は大きく異なる
美容室の経費を抑えるためには、人件費の削減がもっとも簡単な方法です。
一般的に、美容室の理想的な人件費は50%以下、平均して30~40%といわれています。
経営が軌道に乗るまではスタッフを雇用しないか、施術をサポートしてくれるアシスタント1名のみにするなど、いろいろ工夫してみましょう。
美容師が独立するときの注意点
美容師が独立するときに注意するべきことを、5つに分けて解説します。
十分な顧客と一定以上の売り上げがあるか
美容師が独立して成功をおさめるには、新しい店についてきてくれる顧客の数と売り上げ額が勝負となります。
独立後も安定した収入を得るには、月々の売り上げが150万円以上必要です。
開業するサロンについてきてくれそうな顧客を中心に、サロンコンセプトを考えると良いでしょう。
店の規模や立地条件は適切か
契約する店舗の規模や立地条件が適切かどうかも、独立の注意点のひとつとしてあげられます。
なぜなら、資金とバランスがとれない規模の店舗や、サロンコンセプトに合わない環境の店舗で開業すると、経営に行き詰まるリスクがあるからです。
長く安定した経営をするためには、独立を急がず、理想の店舗をじっくりと探すことも大切です。
経営ノウハウを身につけているか
独立してオーナー美容師として成功するためには、施術スキル以上に経営ノウハウが大切です。
極端な例でいうと、美容師の資格を持っていなくても、卓越した経営スキルがあれば美容室オーナーになることもできます。
独立を考えている人は、空き時間で勉強をしたりセミナーや交流会などに出席したりして、経営知識を身につけましょう。
店が軌道に乗るまでの運転資金や生活費があるか
開業のための準備資金だけではなく、独立後数カ月間のサロン運転資金や生活費の確保も大切です。
なぜなら、開業後すぐに安定して売り上げを出せるかどうかはわからないからです。
まったくの無収入でも数カ月間は店を営業し、生活していけるだけのお金は必ず備えておきましょう。
将来の明確なビジョンがあるか
将来的にどのような美容室を経営し、どのような美容師になりたいか、明確なビジョンを打ち出しておくのも、独立の際に大切なことのひとつです。
なぜなら、独立はゴールではなくスタートだからです。
独立に満足するだけでは、店は成功しないかもしれません。
つねに目標を持ち、自分が決めたゴールに向かって努力することが、独立を成功させる秘訣といえるでしょう。
開業せずに美容師が独立する方法
独立はしたいけど開業は不安……と感じている美容師は、以下のふたつの方法を検討してみましょう。
業務委託契約で働く
業務委託契約の美容師とは、企業や美容室オーナーに雇用されず、スキルや売り上げに見合った報酬を得る働き方をいいます。
仕事の内容は契約条件によって異なり、雇われ美容師のように業務全般を託されるケースと、自由に働いて売り上げから手数料を差し引いた分を報酬として受け取るケースがあります。
契約外の業務や残業を請け負う必要はなく、売り上げノルマを課される心配もありません。
面貸しやシェアサロンを利用して働く
面貸しとは、美容室の一部スペースを借りて営業することをいいます。
シェアサロンは、美容室として利用できるレンタルオフィスや店舗を複数の美容師と共用して営業するスタイルになります。
売り上げから利用料や手数料を支払った残りが収入となり、安定した売り上げがあれば、正社員美容師に比べて倍以上に稼げるケースもあります。
まとめ
美容師が独立するためには、1,000万円以上の開業資金と準備が必要です。
独立後の経営やローン返済などを考えると、かなりハードルが高いと感じてしまった人もいるでしょう。
しかし、独立を焦らず入念な準備をすれば、サロンオーナーとして成功をおさめることも夢ではありません。
独立を検討している美容師は、まず雇用を卒業して業務委託契約で働いてみたり、資金をためられるだけの収入を得られる美容室に転職したりするのも、ひとつの手段です。